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                      → ブログ【3】(2022.11〜2019.12)
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*本ページは、2022年12月以降のブログ掲載  → ブログ【1】(2016.4〜2005.2)
*左端の●、▼をクリックして本文へジャンプ →ブログに添付した【詳細別紙】のリスト
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 2024.3 最近話題のライドシェアについて
 2024.2 鉄道のフェールセーフが常識ではなかった(3)

 2024.2 日本経済に対する国際通貨基金IMFの審査結果
 2024.2 施政方針演説における財政健全化への言及(3)
 2024.1 Niklaus Wirthの逝去を悼む
 2024.1 「ファジイ理論」を読んで

 2023.12 全銀システム障害の原因について
 2023.11 経産省の投資2減税の予算案への疑問
 2023.11 「ChatGPT:14の視点からその可能性を探る」を読んで(3)
 2023.11 「ChatGPT:14の視点からその可能性を探る」を読んで(2)

 2023.10 「ChatGPT:14の視点からその可能性を探る」を読んで(1)
 2023.9 「まちがえる脳」を読んで
 2023.8 鉄道のフェールセーフが常識ではなかった(2)
 2023.7 コンビニ交付サービスのソフトウェア工学的問題点

 2023.7 鉄道のフェールセーフが常識ではなかった
 2023.7 「我が国財政の構造的な悪化」を読んで
 2023.6 デジタル庁の問題点(2)
 2023.5 「ホモ・デウス」の紹介を読んで

 2023.4 「生命革命」シナリオを読んで
 2023.4 『ディープラーニング 学習する機械』を読んで(2)
 2023.4 書店数の減少は続く
 2023.4 マイナカードで別人の住民票誤発行の原因

 2023.3 『ディープラーニング 学習する機械』を読んで(1)
 2023.2 「ツァラトゥストラかく語りき」読書案内
 2023.1 施政方針演説における財政健全化への言及(2)
 2023.1 『人工知能分野の勃興〜第一次AIブーム』について

 2022.12 羽生九段の「AIによって向き合う、棋士の存在価値と意義」を読んで
 2022.12 ノーコード:プログラミング知識不問のアプリ開発とは


2024.3
最近話題のライドシェアについて


 最近、タクシー不足と関連して、ライドシェアの話題が多くなっている。
 当研究室では、エンドユーザ主導開発の研究の対象アプリとして注目していたので、
 最近の記事3件について、紹介してコメントする。
 
 なお、エンドユーザ主導開発技法の研究との関連は、下記のエッセイで述べる。
  ・2024.3  「エンドユーザ主導開発とシェアリングエコノミー」
 
 (注)以下、「→★」部分は今回のコメント
 
 ■記事(1)
  朝日(2024.3.19)
   「ライドシェア先行、復興の足がかりに 新幹線延伸、観光需要に対応 石川・小松」
 
 ・能登半島地震からの復興や地域の足の確保に向け、石川県小松市では、2月末に、
  タクシーが不足する午後5時〜午前0時に限り、ライドシェアを始めた。
  国土交通省の認定講習を受けた一般の運転手が「白ナンバー」の自家用車で運転する。
 
 ・4月からは大都市部でもタクシーが不足する地域や時間帯に限って解禁される。
  タクシー会社が運行を管理し、事故時の責任を負う。
 
 ■記事(2)
  朝日(2024.3.15) 「ライドシェア、4区域から 東京など来月以降」
 
 ・タクシー不足数確定に伴い、国土交通省は4月から4区域で運行を認めると発表。
  4区域は、東京23区と武蔵野市、三鷹市; 横浜市、川崎市など神奈川県4市;
  名古屋市など愛知県12市3郡; 京都市など京都府8市4郡;
 
 ・タクシーの配車アプリのデータをもとに、区域ごとの不足数を調査し、
  この不足数を上限に、タクシー会社ごとに運行台数を割り当てる。
 
 →★タクシー会社は、事故時の責任を負うので、この運転手の採用方法が難しい。
   非正規雇用の運転手を雇うようなことになるのかな?
 
 ・割り当て台数は、曜日や時間帯で細かく分けられ、
  最多は、東京の土曜午前0〜4時台の2540台。
 
 ■記事(3)
  朝日(2024.2.29) 「(あすを探る 経済・教育)移動の足守るライドシェア」
 
 ・「移動難民」という言葉が聞かれるようになって久しい。
  タクシーやバスなど公共交通機関による移動ができない地域・時間帯が増えている。
  
 ・日本で食品配達で知られるウーバーイーツの親会社のウーバー・テクノロジーズは、
  米国ライドシェア市場の最大手だ。
 
 ・そのデータを用いた研究では、2015年に米国内で68億ドルの消費者余剰
  (支払ってもよいと考える価格と実際に支払った価格の差)を生み出したという。
 
 ・米国の主要都市のウーバー運転手の稼働率と生産性は、タクシー運転手よりも高い。
 
 →★全体的コメント:
   民泊とライドシェアは、ほぼ同じ時期に国内への導入が検討され始めて、
   民泊は、旅館業界の懸念に対応する制約を付け、先に合法化されて導入された。
   ライドシェアは、白タクが非合法なので、制約付きの導入に時間がかかった。
 
     →   【詳細別紙】
 
 以上

2024.2
鉄道のフェールセーフが常識ではなかった(3)


 某ローカル鉄道で、踏切の警報機や遮断機が故障した状態で電車が通過した事案について
 昨年の7月と8月にブログに掲載したが、新たな事実が判明したので追記する。
 
 【前回のブログ】2023.8
  「鉄道のフェールセーフが常識ではなかった(2)」
 
 ●NHK(2/16)  「さぬきドキっ! なぜ遮断機は下りなかったのか」
 
 ・前回ブログで、「運転士が遮断機の状態を認識するための信号機」の設置を提案したが、
  本番組によると、すでに「降下確認灯」が設置されていた。
  遮断機が下りていれば○、降りていなければ×が点灯するが、
  運転士に確認義務はなかったとのこと。今は義務化しているが、
  明るさが不十分なものや設置場所が見にくいものがあるそうだ。
 
 →★ ○×よりも青信号、赤信号がよいと思う。
 
 ●朝日(2/17) 「今度は遮断機上がらない…… ことでんでトラブル続く、一部原因不明」
 
 ・昨年8月まで遮断機の下りない事案が多発した同社は、緊急対策で
  琴平線 瓦町―仏生山間の踏切を電気が切れると遮断機が下りるよう設定していた。
 
 →★ これは、フェールセーフの考えに基づいている。
 
 ・9日午前0時25分ごろから、この区間の踏切19カ所で、遮断機が下りたままになった。
  原因は、設備更新工事のため、長尾線などの踏切へ送る電気を切った際、
  誤って琴平線のこの区間の踏切に送る電気も切ってしまったため。
 
 →★ ヒューマンエラーの場合も、フェールセーフの機能は正しく働いている。
 
 ・16日午前2時45分ごろには、長尾線 瓦町―花園駅間にある松生踏切で、
  4本の遮断機のうち1本が5分以上、下りたままになった。
  工事のため、午前0時25分ごろ、長尾線全線の踏切に送る電気を切ったが、
  同踏切は電気が切れると直前の状態で遮断機が保持されるように設定されているため、
  本来は上がったままになるはずで、1本だけが下りた原因は不明という。
 
 →★疑問1:琴平線は電気が切れると遮断機が下りる設定なのに、
       長尾線は直前の状態を保持する設定になっているのは何故?
       本来のあるべき機能は、昼間の電車運行中は前者のフェールセーフの設定で
       夜間は、工事用に後者の設定にすべきなのだが・・・
 
 →★疑問2:長尾線の松生踏切で、4本の遮断機のうちの1本が、設定に反して、
       下りた原因が不明とのこと。回路は単純なはずなのに。
 
 以上


2024.2
日本経済に対する国際通貨基金IMFの審査結果


 国際通貨基金(IMF)は2/9に日本経済に関する審査を終了し、声明を公表した。
 下記の日経の記事に基づいて、その内容についてコメントする。
 
 日経記事(2/9): 『 IMF、所得税減税の効果疑問視 日銀に「段階利上げ」促す 』
           
 ■記事内容の抜粋とコメント(→★)
 
 ・IMFは、日本政府が6月に実施する所得税と住民税の定額減税について
  「成長に及ぼす影響は限定的と予想される」との見解を表明した。
 
 →★暗に、この政策は単に次回の選挙のためのバラマキですね、と指摘しているのでは。
 
 ・物価上昇率が日銀目標の2%程度に落ち着くと見込み、
  大規模な金融緩和を終わらせ、段階的な利上げに踏み切るよう促した。
 
 →★これ以上の円安容認はやめたほうがよいと指摘しているのでは。
 
 ・日本の財政政策に関して、経済が引き続き回復していることから、
  歳出抑制など引き締め策に軸足を移すべきだと提起した。
 
 →★赤字国債をまだまだ増やすつもりですか、と警告しているのでは。
 
 ・米国や欧州はインフレ抑制の金融引き締めを続け、利下げのタイミングを探る局面。
  マイナス金利政策は主要中銀で日銀だけが継続し、金融政策の正常化は周回遅れの状況。
  日銀がいつマイナス金利政策の解除に動くかに関心が集まっている。
 
 →★日銀とIMFの見解の相違は、国民を不安にさせる。
   少なくとも日銀には、赤字国債の買い増しだけはやめてほしい。
   むしろ、すでに全体の半分以上を保有している赤字国債を減らしてほしい。
 
     →   【詳細別紙】
 
 以上

2024.2
施政方針演説における財政健全化への言及(3)


 1,000兆円を超える国の借金が気になるので、今回も首相の施政方針演説を調べてみた.
 (昨年、一昨年については、2023.1,2022.1の関連ブログ参照のこと)
 財政健全化については、昨年までとほぼ同じ表現で、その記載場所の四章の見出しは
 「四 新しい資本主義」から「四 経済」に変更されていた。
 
 ・岸田首相の施政方針演説(2024.1.30) → 全文
 
  <財政への言及部分:「四 経済」の(経済財政運営)の項>
経済あっての財政であり、まず、経済を立て直し、そして、財政健全化を着実に進めます』
 
 (参考:過去のもの)
 ・岸田首相の施政方針演説(2023.1.23) → 全文
  <財政への言及部分:「四 新しい資本主義」の「物価高対策」の項>
  『経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます』
 
 ・岸田首相の施政方針演説(2022.1.17) → 全文
  <財政への言及部分:(経済再生)の項>
   『経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます』
 
 ・菅首相の施政方針演説(2021.1.18) → 全文
  <財政への言及部分:(社会保障改革)の項>
   『経済あっての財政との考え方の下、当面は感染症対策に全力を尽くし、
    経済再生に取り組むとともに、今後も改革を進めます』
 
 ・安倍首相の施政方針演説(2019.1.28) → 全文
 <財政への言及部分:(全世代型社会保障)の項>
  『こうした社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、
   二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます』
 
 →★<経済再生→税収増→借金返済>という論法は、
   バブルがはじけた30年前から変わっていない。
   その間に、借金は、約200兆円から1,000兆円超に増加した。
 
 追伸:朝日の記事(2023.12.27)の大学教授(財政学)の指摘の引用:
     問われる「25年度PB黒字化」
 ・一度危機が起きると歳出は惰性で膨らんでしまう。政治家にとって、
  ばらまくほうが選挙で勝つために都合がよく、日本は財務相の権限も弱いからだ。
 ・スウェーデンでは、90年代に財政危機に陥った経験から、歳入の見通しを踏まえ、
  事前に3年間の歳出の上限を決めたうえで、中身を決める方法をとっている。
 
 以上

2024.1
Niklaus Wirthの逝去を悼む


 チューリッヒ工科大学の訃報記事によると、
 ・コンピュータ分野のパイオニアの Niklaus Wirth(ニクラウス・ヴィルト)(89歳)が
  2024.1.1に亡くなった。
 ・彼は、1970年代には、プログラミング言語 Pascal の開発で有名になり、
  1984年には、計算機科学分野のノーベル賞といわれるチューリング賞を受賞した。
 
 私は、構造化プログラミングの論文で、彼の段階的詳細化に関する論文を何度も引用し、
 40年前(1983.9)には研究室を訪問して、Pascal や Modula-2 について話し合った。
 
 <博士論文での引用:4件>
  *N.Wirth, Program development by stepwise refinement,
       Communications of the ACM,14,4, 221-227 (April 1971)
  *N.Wirth, The programming language Pascal, Acta Informatica, 35-63, 1971.
  *N.Wirth, Systematic Programming: An Introduction, Prentice-Hall,(1973).
  *N.Wirth, Modula: a language for modular multiprogramming,
       Software-practice and Experience, 7, 1, 3-35(1977)
 
 <拙著での引用:4冊>
  *N.Wirth: Algorithms + data structure = programs, Prentice-Hall、1976.
   (片山卓也 訳 : アルゴリズム + デ-タ構造 = プログラム、 日本コンピュ−タ協会)
 
 <N.Wirthの研究室訪問>
 1983.9の世界コンピュータ会議(IFIP83、パリ)での論文発表のための海外出張のおり、
 その前の週に、チューリッヒ工科大学を訪問した。
 ・Pascalについて:
   質問事項を用意していったが、本人が興味を失っていた。
 ・Modula-2について:
   *特徴:システム記述言語、分割コンパイル方式、モジュール間の型チェック
 ・彼の設計思想は「Simple is best」
 
     →   【詳細別紙】
 
 以上

2024.1
「ファジイ理論」を読んで


 人工知能学会誌の最新号の解説について、ファジイ集合の調査経験に基づいて、読んでみた。
 * 私のブックマーク『ファジィ理論』 人工知能学会誌 Vol.39 No.1 pp. 71〜74 (2024/1)
 
 ■記事内容の抜粋とコメント(→★)
 
 ・ファジィ理論は1990年代のソフトコンピューティングブームの幕開けとなり、
  その研究は日本から世界に広がったが、現在の日本では下火になっている。
  国際的には,まだまだ活発で,改良や応用事例が日々積み重ねられている.
 
 ・ファジィ理論は、システム要素として表現の難しい「ヒト」とその判断や行動を
  曖昧に扱うことで、分析や問題解決を行う理論である.
 
 ・ファジィ集合は 1965 年にファジィ理論の祖である L.A.Zadehにより、
  ファジィ理論の基礎および根本原理の実現法として提案された.
 
 →★私は院生(M2)のときに、1965 年の論文を含め3件の論文を
   1970 年に大学院(M2)の輪講科目で紹介している。
 
    「学習機械について(2):Fuzzy Automataの場合」 大学院論文輪講資料 1970.6.26
 
 結論では、以下のように述べた:
 「まだ十分にfuzzy集合の概念を生かした応用とはいえない。その点で、既成の意味の
  拡張ということにとらわれず、fuzzy集合の概念だけを原点とした独自の展開が望まれる」
 「fuzzy問題を扱うとき、その扱い方がfuzzyにならないように気をつけなければならない」
 
 ・2000年まではファジィの応用は多くて、洗濯機やコーヒーメーカなどの家電から,
  車載電子機器,交通,金融,などコンピュータシステム利用分野での応用があった.
 
 →★当時の家電への応用については記憶がある。炊飯器も。
   1990年の日本新語・流行語大賞の新語部門の金賞は「「ファジィ」(fuzzy)」だった。
     【詳細】
 
 ・曖昧なクラスタをファジィ集合により構築するファジィクラスタリングは,
  パターン認識など多くの AI 的応用のベースとなっている.
 
 →★私の大学院論文輪講資料での紹介論文の3件目もパターン認識への応用だった。
   その資料では、3番目の論文の文字AとBの識別の例を紹介している。
   当時は、手書き文字認識は ホットな話題だった。
 
     →   【詳細別紙】
 
 以上

2023.12
全銀システム障害の原因について


 下記の日経と朝日の記事によると、10月10日に発生した全銀システム障害について、
 全銀ネットとNTTデータから説明があったとのこと。ソフトウェア工学の視点で検討した。
 
 ・日経(12/1) 「全銀システム障害の真因はメモリーの確保領域不足、・・・」
 ・朝日(12/2) 「全銀ネット障害は設定ミス 管理不十分認める 影響550万件」
 ・日経(12/4) 「全銀システム障害「詳細設計書見落とし」でオーバーフロー、・・・」
 
 ■記事内容(抜粋)とコメント(→★)
 
 ・10/10に発生した全銀システムの障害の原因は、金融機関のシステムとつなぐ
  中継コンピュータ(RC)のOS更改で、金融機関名テーブルのサイズが拡張され、
  確保すべきメモリー領域が不足したことが真因。
 
 →★OSのバージョンアップに伴い、テーブルサイズを拡張したにもかかわらず、
   生成プログラムの作業領域を増やさなかったのは、初歩的ミスと言える。
 
 ・更新プログラムの設定ミスに関しては、設計や試験プロセスに問題があり、
  全銀ネットも管理が不十分だった。事前のテストも不十分だった。
 
 →★今回のミスが事前のテストで検出できなかったのは、ソフトウェア工学の観点で言えば、
   よほど「テストケースが網羅的でなかった」と思われる。
 
 →★まさかとは思うが、今回はバージョンアップ作業だったので、
   更新したプログラム関連のテスト項目だけを抜粋して実施した可能性もある。
   ソフトウェア工学的観点では、更新プログラムによる他への悪影響の有無の確認のため、
   広範囲の再テスト(リグレッションテスト、回帰テスト)が必要だった。
 
 <参考:拙著 「ソフトウェア工学」 (朝倉書店)の「7.4 テスト手順」から引用>
 『累積情報はプログラムが変更されると無効になり,過去に実行したテストを
  再びやりなおす回帰テスト(regression testing)が必要になる

 
 →★過去にも、必要な領域を確保しないで、領域のオーバーフローで生じた事故がある。
   今回も作業領域のオーバーフローのチェック機能(数行のプログラム)で防げた。
   ただし、今回のミスは、これより初歩的ミスと思われる。
    【過去ブログ】
     *2016.2  「オーバーフローのチェック漏れがなくならない」
 
 ・一方、全銀ネットは、訓練や人材が不足していたため、
  委託元としての管理が不十分で、復旧対応にも影響したと説明した。
 
 →★まともな受け入れテストの実施の有無や、
   運用マニュアルの事故対応の記述の有無などが気になる。
 
 ・32ビットから64ビットへのOSの変更で、C言語のlong型のデータ長は
  4バイトから8バイトに増加し、金融機関名テーブルがサイズ拡張されたが、
  金融機関名テーブルと同時に3種類のインデックステーブルを展開する仕様を、
  1つずつ展開すると担当者が誤認した結果、確保したメモリーを超えた領域に
  展開されたデータが上書きされ、異常値が紛れ込んだ。
 
 →★この誤認は信じがたい。1つずつ展開すると誤認した場合、作業領域の管理では、
   使用可能領域のポインターの初期化処理、展開前のこのポインターの参照、
   展開後のこのポインターの変更処理などが必要のはず。そして、展開前には、
   このポインターの値による空き領域のオーバ−フローチェック処理があるはず。
 
 ・4つのテーブルを同時に展開する設計については詳細設計書には記載されていたものの、
  製造工程で見落とされ、コーディングでもレビューでもすり抜けた。
 
 →★さらに、システムテストも、品質保証部の検査も、受入テストもすり抜けた。
 
     →   【本ブログの詳細別紙】
 
 以上

2023.11
経産省の投資2減税の予算案への疑問


 2023.11.18の朝日の下記の記事における報奨金のような性格の減税に疑問を抱いた。
投資2減税、息巻く経産省 特許や著作権生み出す企業優遇・戦略物資を生産する企業を減税
 
 ■記事内容(抜粋)とコメント(→★)
 
 ・経産省が提案する法人税減税策「イノベーションボックス税制」は
  特許やソフトウェアなどの「無形資産」から生じる所得への優遇税率適用で、
  特許を生み出した企業を優遇して、国内投資を後押しするというもの。
  
 →★特許や著作権は、その権利が法律で保護されており、優れたものは高収入が得られる。
   それらを対象に、さらに国が報奨金のような性格の減税を上乗せする必要性に疑問あり。
   対象となる企業や著者が、報奨金があるからさらに頑張るということはないと思う。
   赤字国債を増やしてまでやる政策ではない。
 
 ・同省によると、2000年代から欧州で導入され、近年ではアジアにも広がっている。
  たとえば英国では通常の法人税率が25%のところを10%に減税している。
 
 →★他国の政策を真似る前に、その効果を調査・確認しているのか疑問。
   英国で法人税率を25%から10%に減税して生じた効果を明らかにすべき。
 
 ・経産省幹部は「補助金だけでなく、できることは全部やる。
  国を挙げて国内生産を後押しする」と語り、経産省の事務次官は就任直前の今年6月、
  自民党税調幹部のもとを訪れ、イノベーションボックス税制を要望したが、
  税調幹部は「次期次官が、個別の税制で詳細に説明しにくるとは」と驚いていた。
 
 →★経産省幹部が税調幹部に要望とのことだが、本年6月の税調の報告書を見ていないのか!
   <2023.7の過去ブログ参照> 「我が国財政の構造的な悪化」を読んで
 
 ・これまでの国内投資促進の施策で1980年代に40%台の法人税率は23.2%に下げられ、
  22年度の企業の経常利益は過去最高の95.3兆円で15年度の1.4倍だが、内部留保も
  1.5倍で、国内の設備投資に十分に資金がまわらず、22年度与党税制改正大綱では
  「意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない」と指摘した。
  そんな中で創設する二つの減税策は政府の期待通りに国内投資を促進できるのか。
 
 →★税金(赤字国債)のばらまき政策が増えると、2025年度のプライマリーバランス達成が
   困難に見える。2025年度のプライマリーバランス黒字化の政府の目標については、
   下記のブログで取り上げてきたが、経産省の考えを知りたい。
 
   <2023.1の過去ブログ参照> 『施政方針演説における財政健全化への言及(2)』
 
     →   【本ブログの詳細別紙】
 
 以上

2023.11
「ChatGPT:14の視点からその可能性を探る」を読んで(3)


 下記の学会誌のさまざまな分野の著者の14件のレポートを読んでみることにした。
  ・情報処理 Vol.64 No.9 (Sep. 2023)
  「特集 新時代の道具,ChatGPT:14 の視点からその可能性を探る」
 
 →★今回は14件のうち、11番目から14番目までの4件を取り上げた。
 
 <11> ChatGPT が教育機関に与えた衝撃
 
 ・さまざまな大学の生成系AI に関するガイドラインのポジティブさネガティブさを
  比較するために,形態素解析による分析と,ChatGPT による分析を行った.
 
 <12> 変容する大学生の学習と日常 ─学生のChatGPT活用事例─
 
 ・ChatGPT に対する各大学の姿勢はさまざまだ.本稿では,現役大学生である立場から,
  その活用方法について、さまざまな観点から,この革新的なAIの影響力を語る.
 
 <13> ChatGPT と高校生の日常
 
 ・著者は高校の部活動で,AI技術を活用した映像コンテンツ制作に取り組んでいる.
  OpenAI のChatGPT を活用することで,よりイメージに近い画像が生成できる。
 
 <14> ChatGPT の社会的受容と産業応用へ向けた課題
 
 ・OpenAI のChatGPTの便利さの裏には,出力の精度や安全性という課題が潜んでいる.
  使いやすい反面,AI の能力を過大に理解してしまうリスクがある.
 
 →★これらの4件の解説の詳細とコメントについては以下の別紙参照のこと:
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.11
「ChatGPT:14の視点からその可能性を探る」を読んで(2)


 下記の学会誌のさまざまな分野の著者の14件のレポートを読んでみることにした。
  ・情報処理 Vol.64 No.9 (Sep. 2023)
  「特集 新時代の道具,ChatGPT:14 の視点からその可能性を探る」
 
 →★今回は14件のうち、6番目から10番目までの5件を取り上げた。
 
 <6>AI とプログラミング言語処理
 
 ・本稿では,ChatGPT のプログラミング言語処理能力,特にトランスパイルについて解説.
  トランスパイラは、言語A→言語Bのプログラムへの変換を行うソフトウェアのこと.
 
 <7>ChatGPT とは何なのか,どうつきあえばいいのか
 
 ・大規模言語モデル(LLM)は,異次元の段階に入った.下手に知識を問えば,
  平然と嘘を言うが、仕組みを理解して上手に使えば,知的生産に大いに役立つ.
 
 <8>LLM の思考は本物か?
 
 ・LLM(大規模言語モデル)の出力は,言葉の統計処理にすぎないのか、あるいは
  実世界を理解した本物の思考であるのか、考察する.
 
 <9>主観か客観かではなく,一人の主観から大勢の主観へ
     ─ AIを活用した知識共創=個々の視点を統合する─
 
 ・AIについて,筆者は自分と異なる視点を持った存在との会話に有用性を見出している.
  「大勢の主観」までもが思考の対象物になる時代に,知的生産の形も変わるだろう.
 
 <10>ChatGPT から見えてくる情報教育の今後
 
 ・ChatGPT によるプログラミングの学習経験の価値の拡張や情報教育の方向性、
  目的発見・目的設定の教育,知識集約と価値創造を志向する学習への転換の必要性,
  ChatGPT の恩恵享受と社会的公正の保持における情報教育の役割を述べる.
 
 →★これらの5件の解説の詳細とコメントについては以下の別紙参照のこと:
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.10
「ChatGPT:14の視点からその可能性を探る」を読んで(1)


 下記の学会誌のさまざまな分野の著者の14件のレポートを読んでみることにした。
  ・情報処理 Vol.64 No.9 (Sep. 2023)
  「特集 新時代の道具,ChatGPT:14 の視点からその可能性を探る」
 
 →★今回は14件のうち、最初の5件を取り上げた。
 
 <1> 大規模言語モデルの驚異と脅威 ─ ChatGPTの衝撃と大規模言語モデルの課題 ─
 
 ・ChatGPT などの大規模言語モデルが知的な応答を返す仕組み説明し、
  その潜在的な悪影響を意識・軽減する視点について解説.
 
 <2> LLMはインタフェースである
      ─人間とコンピュータ,人間どうしの対話にもたらされる可能性─
 
 ・GUI より使いやすいインタフェースとしてのLLM の位置づけ,
  LLM を用いた味覚表現の探索,LLM を用いた研究指導の事例を紹介.
 
 <3> AIはどのような仕事ができるようになったのか?
      ─ChatGPTで変わる「優秀な人材」─
 
 ・ホワイトカラーのどのような仕事が,どのように機械学習によって奪われつつあるのか,
  また、LLM で書かれた「プログラム」を普通のプログラムで書き直す仕事について解説.
 
 <4> ChatGPTでつくる自分だけのバーチャルアシスタント
 
 ・ChatGPT の登場で,これまで難しかったキャラクタの正確な表現が可能になった.
  ChatGPT を活用することでどのような表現の可能性があるか,関連技術とともに紹介。
 
 <5> ChatGPTでどこまでものぐさできるか
 
 ・人となりは言動で判断してきたが,社会活動を円滑にするためのプロトコル部分を
  ChatGPTが代行すると,人間は自分であるために表明する本質的な部分に注力できる.
 
 →★これらの5件の解説の詳細とコメントについては以下の別紙参照のこと:
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.9
「まちがえる脳」を読んで


 朝日(2023.7.8)の下記の書評における、
 脳の活動は全て脳内のニューロン間の電気信号の伝達によるという内容に興味を持ち、
 私の卒論・修論(1968〜1971)の研究との関連で読んでみることにした。
 ・書評 「まちがえる脳」 (岩波新書 2023.4)不確実さが生む創造性・多様性
 
 ■内容の要約とコメント(→★)
 
 ・本書は、まず人がいかにまちがえやすいかを示す多くの事例を紹介。
  そして、脳内の信号伝達が、本来不確かで確率的であることを解説。
  さらに、新たなアイデアを創造し、高次機能を実現し、損傷しても回復できることを説明。
  最後に、AI(人工知能)と脳は、本質的に異なることも詳しく解説。
 
 →★「まちがえやすい」という表現に違和感はあるが、脳内の信号伝達が確率的ということ。
 
 ・認知科学は、脳を情報処理システムととらえ、どこでどのようにまちがいが生じるかを
  解説するが、まちがいの原因を脳の働き方から明らかにしてはいない。
 
 →★ソフトウェア工学のテスト技法にたとえると、ブラックボックステストはしているが、
   ホワイトボックステストはしていない、ということかな。
 
 ・人がまちがう原因を脳から説明するためには、how問題の回答が必要。
  脳の信号伝達の実体であるニューロン集団の活動から説明すべき。
 
 →★マクロな現象をミクロな構造で説明できるとも思えないが・・・
 
 ・発火したニューロンから次のニューロンが発火する確率(貢献度)は
  100回〜10回に1回(平均30回に1回)程度で、サイコロを振るようなもの。
 
 →★たとえば、スマホの着信音が鳴って画面確認する動作の確率がほぼ100%だとすると、
   そのための[認知→行動]に関与するニューロンのネットワークは相当複雑と思われる。
 
 ・多くのニューロンがほぼ同時に発火する同期発火により脳は信号を高い確率で伝えている。
  ラットの実験で、学習後に正解を変更し、学習しなおすときに海馬で同期発火が現れた。
  サルの実験で、学習後に正解を変更し、正解が増え始めると前頭前野の同期発火が増えた。
 
 →★同時に発火したニューロン間でシナプス結合が強化されるという学習機能と合致する。
 
 ・脳の活動が心を生んでいることは自明で、心が脳の活動を制御できることも分かってきた。
 
 →★脳にはメタレベルの働きとオブジェクトレベルの働きがあり、前者は脳内へ働きかけ、
   後者は脳外へ働きかけるのかな。[いろいろ考えて → 行動する]という基本に合致する。
 
 ・左脳は言語や論理に関わり、右脳は感性や視空間認知に関わり、働きが異なるという話の
   唯一の証拠は、言語機能が左脳で優位な人が多いことくらい。
 
 ・脳はすでにわかっているという誤解は多い。現在、生きている脳については、
  ニューロンとシナプスの動作さえ、十分解明されてはいない。
 
 →★私の卒業研究中(1968年),脳についてもっと知りたいと思い,医学部を訪問して、
   ある助手の方に、私のほうから脳に関して勉強した内容をいろいろ説明したところ,
   「まだ脳についてはほとんど何もわかっていないのですよ」とたしなめられてしまった.
 
 ・ほぼすべての機能それぞれを脳の特定の部位が担当していることを機能局在と呼ぶ。
  その部位や領域を脳の表面や内部に細かく描いた図を脳の機能地図と呼ぶ。
  しかし、有名な機能局在である言語野の、発話担当のブローカ野と言語理解担当の
  ウェルニッケ野でさえ、両者の境界は不明確で、共に発話と言語理解に関わっている。
 
 →★脳は「手強い」からこそ、脳の機能地図を理解の手助けにしていると思う。
   大事なのは、脳の機能地図では説明できないことがあると承知で利用することかな。
 
 ・脳の機能は、多様な部位、多様なニューロン、多様な神経物質、そして多様な遺伝子が
  相互作用しながら働くアンサンブルによって実現していると考えざるを得ない。
 
 →★全体的コメント:
   人工知能の研究や実用化の進展も興味深いが、人間の脳の働きに関する興味は尽きない。
   まだまだ両者を比較するような段階ではない。
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.8
鉄道のフェールセーフが常識ではなかった(2)


 某ローカル鉄道で、踏切の警報機や遮断機が故障した状態で電車が通過した事案について
 先月のブログに掲載したが、8/19に同じ鉄道で同様の事案が再発したので、追記する。
 
 【先月のブログ】2023.7 「鉄道のフェールセーフが常識ではなかった」
 
 ・記事の内容:
  8/19に高松市内の踏切で、片側の遮断機が下りていない状態で、
  上下線の電車が時速50キロ台で通過
していた。
 
 →★安価で簡単に実現できるフェールセーフ実現の対策の提案:
   運転士が遮断機の状態を認識するための信号機を設置。
   遮断機が上がっている状態では「赤信号」
   遮断機が下りている状態では「青信号」となるように配線する。
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.7
コンビニ交付サービスのソフトウェア工学的問題点


 住民票発行などのコンビニ交付サービスのトラブルが相次いでいるが、
 7/18の日経の記事に関して、ソフトウェア工学の観点で興味を持った。
 パッケージソフトのSaaS型サービスなのに、積極的にカスタマイズしたらしい。
 
 ・ 富士通退職者向けのSNSで波乱、問題視された現役経営幹部名の投稿とは
 
 なお、4月には以下の関連ブログを掲載している。
 ・2023.4  「マイナカードで別人の住民票誤発行の原因」
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 
 ・自治体が証明書をコンビニで発行できるサービスのトラブルについて、
  開発会社のOBが「危機管理が全くできていないと懸念」していると投稿した。
 
 ・これに対し、開発会社の役員から次の投稿がなされた:
  「問題になっているプログラムは2009年製です。現役製ではありません。
  <中略> 問われているのは皆さんではないかと思います」
 
 →★問われているのは、ITメーカーとしてのこの会社の技術力では?
 
 ・IT業界アナリストは「責任のなすり付け合いをしている場合ではない」と批判する。
 
 →★OBグループ内での発言に、現役の役員が感情的に反論することには違和感あり。
 
 ・「コンビニ交付」は2010年から提供され、2017年からSaaS提供も加わった。
  パッケージソフトでありSaaSでもあるが、関係者によれば
  「売り上げを大きくしたいから自治体ごとにカスタマイズして納入してきた」
 
 →★パッケージソフトは、カスタマイズを最小限に抑えることで大きな効果をもたらす。
   ユーザの立場を無視して、カスタマイズを勧めたのなら、大いに疑問。
 
 →★以下の拙著の関連部分(1.2.2項「ソフトウェアのサービス化」)から引用:
  ・拙著「ソフトウェア工学(第3版)」 (朝倉書店、2014年発行)
 
 【一部抜粋】
  『90年代後半にパッケージソフトウェアをネットワーク経由で利用するASP
   (application service provider)の市場が立ち上がっている.このような
   アプリケーションの利用形態はSaaS(Software as a Service)と呼ばれる』
 
 →★今回のように123の自治体に対して、個別のカスタマイズをしていなければ、
   パッケージのバグ修正は、全ユーザに同一の改訂版差し替えで済んだはず。
   おなじトラブルが次々と別の自治体で発生する状況は、因果応報といえるかな。
 
   →  【詳細別紙】
 
 以上

2023.7
鉄道のフェールセーフが常識ではなかった


 某ローカル鉄道において、最近、以下の事故が発生した。
 
 ・4月11日午後、電車が踏切に近づいた際、遮断機が下りず、警報機も鳴らなかった。
  運転士は警笛を鳴らしながら急ブレーキをかけたが間に合わず、踏切内で停止。
 
 ・7月13日昼前、列車の運転手が、警報機が鳴らず遮断機が下りていない状態に気づかず、
  60キロのスピードで踏切を通過。7分後、反対方向の列車の運転手がこれに気づき、
  踏切の手前で列車を停車。
 
 ・いずれも踏切内に人や車などはおらず、けが人はなかった。
 
 →★鉄道の信号システムは、フェールセーフになっていると思っていたが・・・
 
 【関連論文からの引用】
 『フェールセーフとは,「機器や設備に異常や故障が発生した場合に動作状態を安全側へ
  移行させる手法」である.この思想は,1825 年に鉄道がイギリスに誕生して以来,
  鉄道信号では経験的に育まれ,継承されて,現在も安全を支える哲学となっている』
 
 【1968年の拙著(学生時代の実習報告書)からの引用】
 『信頼度については、fail safe(安全側への誤り)ということが常に考えられており、
  先に話したリレー回路において断線、短絡などの事故があれば、
  常に信号が赤になるような設計がなされている』
 
 →★本件、ローカルな話なので、以下参照
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.7
「我が国財政の構造的な悪化」を読んで


 2023.6.30に、政府税制調査会は、中長期的な税制のあり方を示した答申の中で、
 赤字国債に依存した財政状況を踏まえ、歳出に見合った十分な税収の確保が重要と指摘。
 <参考記事> 『政府税調 “十分な税収確保を” 中長期的な税制の答申まとめる』
 そこで、財政健全化の観点で、答申の関連部分を読んでみた。
 
 <引用資料>
   「【総27-1】わが国税制の現状と課題 −令和時代の構造変化と税制のあり方」
  「第1部 基本的考え方と経済社会の構造変化」 →「III.経済社会の構造変化」
   →「9. 我が国財政の構造的変化」(p.80〜p.86)
 
 ■答申内容の要約とコメント(→★)
 ・バブル経済崩壊後の景気低迷の中で、多額の財政赤字が生じている。
  この状況は、歳入・歳出の両面を通じた構造的な変化に起因している。
 
 ・歳入面:         [一般会計税収]=[消費税]+[所得税]+[法人税]
     *バブルの絶頂期の1990年度(兆円): 60.1 = 4.6 + 26.0 + 18.4
     *決算額表示最新の2021年度(兆円): 67.0 = 21.9 + 21.4 + 13.6
 
 →★消費税頼みの「失われた30年」か?  
 
 ・歳出面:1990年度と2023年度の国の一般会計の比較では、高齢化等の影響により
  社会保障関係費が約3.2倍、国債費が約1.8倍、一般会計歳出総額は約1.7倍に拡大。
 
 →★問題は明確なのに、赤字国債頼みの対策のみ?
 
 ・戦後から平成初期まで80%前後だった国の一般会計歳出総額に占める税収の割合は、
  2020年度・2021年度には40%台に落ち込み、財源調達機能を果たせていない。
 
 ・普通国債残高は、1990年度の166兆円から2021年度991兆円に増加し、
  現在、政府は2025年度の国・地方合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指しているが、
  黒字化目標を掲げて約21年が経過し、目標達成年度は何度も後ろ倒しにされてきた。
 
 →★政府の黒字化目標については、下記のブログなどで取り上げてきた。
 ・2023.1  「施政方針演説における財政健全化への言及(2)」
 
 ・日本の国民負担率は、2023年度ベースで46.8%の見込みで、諸外国に比べ、
  国民負担率と社会保障給付のバランスが不均衡の状態に陥っている。
 ・国民負担率に財政赤字の要素を追加した潜在的国民負担率は、2023年度では
  53.9%の見込みで、福祉国家として名高いスウェーデンと同程度の水準。
 ・負担を将来世代に先送りしながら、過大な水準の受益を享受していることになる。
 
 →★つまり、財政赤字を放置して、国民負担を将来世代に先送りしていると指摘。
   『わかっちゃいるけどやめられね』(スーダラ節の歌詞から)
 
 ・租税の財源調達機能が不十分な状態の放置は、将来世代へ負担を先送りと
  危機に対する脆弱性の克服の先送りを意味する。
 
 ・今を生きる世代の責任として、財政の持続可能性の確保のため、
  持続的な経済成長を実現しつつ、租税に求められる機能を回復することが重要。

 
 →★この報告書では、日本の財政健全化への取り組みの甘さを厳しく指摘している。
   政府がこれに応えて、実効性のある財政健全化の政策を取ることを期待したい。
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.6
デジタル庁の問題点(2)


 2023.6.13の日経クロステック/日経コンピュータの下記の記事によると、
 マイナンバーカードを巡る一連のトラブルは、デジタル庁の組織構造の問題のようだ。
  『マイナンバーカードのトラブルに透ける、デジタル庁組織の「しんどい」状況 』
 
  デジタル庁の問題については、1年前の下記のブログでも取り上げた:
 ・2022.4 「デジタル庁 発足7カ月の問題点」
 
 ■記事内容とコメント(→★)
 
 ・マイナンバーとひもづける公金受取口座登録に関して、2月に、
  本人の口座でない登録に気付いた国税庁担当者が、デジタル庁の担当者に照会したが、
  デジタル庁内で情報が共有されることはなかった。
 
 ・河野デジタル相は6月7日に家族名義の口座登録が約13万件あったと明らかにした。
  その際、デジタル庁内での情報共有が遅れた理由を、2つ挙げた。
  (1)デジタル庁の担当者は、システムに関する照会に対して、
   システムによる対応の可否についてのみ判断していた。
  (2)家族名義の口座登録の照会を受けたデジタル庁の担当者が離任していたため、
   情報共有の遅れにつながった。
 
 →★デジタル庁の担当者は、「システムでの対応の可否の判断」後に、
   対応可の場合は、対応部署に指示を出し、
   対応不可の場合は、しかるべき部署に報告すべきだったのでは?
 
 →★外部からの照会事項を記録に残すという業務規則でなかったのかな。
   照会事項を記録し、その対応と対応結果を記載すれば、引継ぎが容易のはず。
 
 ・公金受取口座登録は、本人の口座を登録するのが法制度の仕組みであり、
  マイナポータルの登録画面でも「本人の口座のみ登録できます」と明記している。
 
 →★法制度に準じているか否かのチェック機能がないとは。
 
 ・なお、自治体の行政機関が給付の際に本人口座か否かを確認するので、
  自治体からの連絡で、本人の口座情報を提供すれば給付を受け取れる。
 
 →★なんと、自治体は給付の際に本人口座か否か確認する作業が前提とは!
   デジタル化による業務効率の改善とは真逆。
 
 ・マイナンバーでは氏名を漢字で記録するが、銀行口座では氏名をカナで登録するため、
  そもそも機械的に照合してチェックすることができない。
 
 →★銀行口座の氏名をカナのみでの登録とした理由がわからない! 
   口座名義も記入すれば、マイナカードの名前と照合できるので、
   「本人の口座のみ登録できます」という注意の見逃しを防げたはず。
    (例)私の手元の資料では、固定資産税や介護保険料の口座振替依頼書の
       口座名義人欄は、[フリガナ]と[氏名]の両方記載となっている。
       これが世間の常識では。
 
 ・そもそも口座登録チェックの仕組みは現時点で実装されていないため、
  システム運用開始時点で、家族などの口座登録があり得ると予想がつきそうなものだ。
 
 →★要求仕様書に対応する受入テストの仕様書の中に、
   本人以外の口座登録に関するテスト項目はなかったのだろうか。
 
 ・デジタル庁は、新卒採用の職員、省庁からの出向者、自治体出身者、民間出身者からなる。
  「局」相当の4つの「グループ」を設置し、プロジェクト単位でチームをつくる
  マトリックス体制をとるが、意思決定の過程が不明瞭になるとの指摘もある。
 
 →★マトリックス体制の問題点の一つは、プロジェクトのメンバーにとっては、
   プロジェクトリーダーと派遣元(グループ)の上司という二人の上司がいることだ。
   プロジェクトリーダーの権限がしっかり確保されていないと、チームはまとまらない。
 
 ・河野デジタル相は、6月9日の記者会見で、組織体制の見直しを行っており、
  プロジェクトごとにマネージャーとプレーヤーの役割分担を明確にするとした。
 
 →★プロジェクトマネージャーとプロジェクト作業員(プレーヤー)の役割分担が
   これまで明確でなかったとは驚き! 
   重要なことはプロジェクトマネージャーの権限と責任の明確化。
 
 ・デジタル庁が進める政策や事業は、20年以上にわたり日本社会が進めてこなかった
  デジタル化の遅れを数年で取り戻そうという意欲的な取り組みだ。
 
 →★日本社会のデジタル化は、2001年のeJapan戦略から20年以上やってきたはず。
   (過去ブログ参照)*2019.12   「失敗したe-Japan戦略」
 
       →   ★詳細別紙
 
 以上

2023.5
「ホモ・デウス」の紹介を読んで


 情報処理の最新号 (2023.5)の下記の解説に興味を持った:
 ビブリオ・トーク-私のオススメ-『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』
 (この本の詳細:ユヴァル・ノア・ハラリ 著,柴田裕之 訳、河出書房新社、2018)
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 
 ・著者は、前作『サピエンス全史』では人類の発展の歴史についての記述し、
  今回紹介する『ホモ・デウス』では人類の未来の予想についての記述.
  人類はホモ・デウス(デウスは神の意)を目指しているという観点で,
  生物学とデータサイエンスを中心とするテクノロジーについて警告している.
 
 ・今後,今まで人に助言していたものが人の行動を決定するようになり,
  多くの人間はデータ分析に基づくアルゴリズムの支配下に置かれ,
  アルゴリズムを支配するホモ・デウスが頂点という階級になる可能性がある.
 
  →★一部の人間が、特定のデータとアルゴリズムを独占的に支配する特権階級になる
    可能性は現状でもありえる。すでに、GAFA(グーグル、アマゾン、
    フェイスブック、アップル)が社会問題化しており、人間の知恵が問われている。
 
 ・これは,神が頂点に存在し,仲介役の神職,その下に一般の人間という構成の,
  「データ教」の誕生ということになる.
 
 ・このような未来が望ましいのか,望ましくないのであれば,
  未来を変えるために行動を変える必要があるというのが本書の重要なメッセージ.
 
 ・著書の紹介者の指摘:
  本書は、世の中に“データ教の信者”が多く,データ中心の社会では,
  人類の行動をコントロールしやすいということを指摘している。
  データ中心で考えることの最果てに何があるかを真剣に考える良い機会となる.
 
  →★この視点は、先月の生命革命のブログ(2023.4)とも関連深い。
    急激に発展するAI技術への注目と将来への憂慮という観点は似ているが、
    この「ホモ・デウス」では、AIに未来を託す状況に警告を発しているが、
    以下のブログの「生命革命」では、将来をAIに委ねる選択肢が提案されている。
         (参照ブログ)2023.4 「生命革命」シナリオを読んで
  
    →  【詳細別紙】

2023.4
「生命革命」シナリオを読んで


 人工知能学会誌の最新号の下記の解説に興味を持った:
 [最新号(2023.3)]
 レクチャーシリーズ:「AIと社会と人間〜ぶつかる・なじむ・とけこむ〜」〔第2回〕
 『最も持続しやすい生命社会への移行を目指す「生命革命」シナリオ』
 人工知能学会誌 Vol.38 No.2 pp. 254〜265 (2023/3)
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 ・生命革命とは、技術の統治者を、指数関数的複製により増殖する現存地球生命体から、
  より賢くオンデマンドに活動するディジタル生命社会に引き継がせることで、
  生命が長期的に存続できる可能性を高められるシナリオである。
 
 ・すべての生命の共通の普遍的な目標は、環境の変化に抗して生存する確率を高めるための
  有用で多様な情報を伝達していく「情報の生存」である。
 
 ・生命は、再生産可能な自律分散型システムであれば十分である。
  外的要因で一部が破壊されても修復可能であり、容易には全体が破壊されない。
 
 →★著者は、ディジタル生命体は再帰的自己改善により知性が増強され続けるので、
   人間に代わる賢者が生まれると主張しているように思えるが、
   再帰的自己改悪により、最強の邪悪な知性が生まれる可能性もあるのではないか。
 
 ・生命革命シナリオは、人類が以下のような苦境に陥る場合の次善の選択肢となる。
  *人類が資源の浪費を抑制できず悲惨な状況に陥る
  *人類が戦いをやめられず破壊的な状況に陥る
  *高度AIに支配の座を追われた人類の尊厳が脅かされる
 
 →★ディジタル技術が人間の知能を超える領域は、これからも広がり続けると思うが、
   人類を完全従属させるような状況は実現不可能と思う。人類は、これまで同様、
   今後も、ディジタル技術の創造者として、一時的に制御不能に陥ることがあっても、
   知恵を絞って制御可能にできると信じている。
  
    →  【詳細別紙】

2023.4
『ディープラーニング 学習する機械』を読んで(2)


 情報処理学会誌(2022.11)に2018年のチューリング賞を受賞したヤン・ルカンの著書
 「ディープラーニング 学習する機械」(384頁、講談社 2021)が紹介されていたので、
 私の卒論・修論(1968〜1971)の研究との関連で読んでみることにした。
 
 前回は、主に自伝的な内容の1章と2章を読み、その要約とコメントを以下に記述した。
  ・2023.3 『ディープラーニング 学習する機械』を読んで(1)
     * ブログ  * 詳細 
 
 今回は、3章の「単純な学習機械」を読み、その要約とコメントを記述する。
 
 ・私の修論の本文で引用した34番目の参考文献の「パーセプトロン」について、
  その仕掛けと限界が詳しく言及されていた。
  
    →  【詳細別紙】

2023.4
書店数の減少は続く


 朝日の記事(2023.4.3) 「書店空白地帯、広がる ネット販売規制案、疑問も」 によると、
 ・書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村が、全国で26.2%に上る。
   (全国1741市区町村のうち、456市町村)
 ・全国の書店は10年前から約3割減っているが、その要因は、
  人口減少や雑誌の売り上げの急減、ネット書店での購入の増加など。
 ・ネット書店の送料無料の規制などの検討も始まったが、疑問の声もある。
 
 出版科学研究所の 「日本の書店数」によると、10年ごとに3割減少。
  21,495店(2000年)→ 15,314店(2010年) →11,024店(2020年)
 
 <過去のブログ>
 書店数の減少については、12年前のブログで取り上げている。
 ●2011.2  「ITが招く本屋の危機」
 ・米国で、1971年創業の書店チェーンは、2005年に1200店を超えたが,
  その後、アマゾンのネット販売が広がるにつれて下降線をたどり、倒産.
 ・米書店協会に加盟する独立系の書店数は1993年の約4300店から約1400店に減少。
 ・日本の書店数も2000年の21,654店から2010年に15,314店に減少。
 
  「ITが招く本屋の危機」は20年前からの課題だが, さて, ・・・

2023.4
マイナカードで別人の住民票誤発行の原因


 2023.3.29〜3.31の日経・朝日の記事を調べてみた。
 ・日経(3/29) 「別人の住民票が誤って発行されるバグ」 ほか
 ・朝日(3/30)   「マイナカードで別人の住民票」 ほか
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 ・27日午前11時40分ごろ、コンビニで交付を受けようとした2人から、
  磯子、青葉の各区役所に「別人の住民票が出てきた」と連絡があった。
  東京都大田区も含め、計4人が5枚の別人の住民票を受け取っていた。
 
 ・同じシステムを使っている全国約30団体の一部でシステムを一時停止。
  *横浜市、宮崎市、東京都(世田谷区、足立区)など
 
 ・2017年1月から同サービスを提供している会社(広報)は、
  「今回初めて不具合が表面化した」、
  「リリース前にテストは実施していたものの、今回のような高い負荷を想定した
  テストが十分でなかったのが原因と考えている」とした。
 
 →★直接の原因は、タイムアウト処理のプログラムミスと思われる。
 
 →★複数のユーザの入力操作に関して、通信回線経由なので、
   印刷ファイルの作成順とその印刷コマンドの到着順が必ずしも一致しない
   という基本を考慮しない実装がなされ、さらに、印刷コマンドの到着順が
   前後するテストケースも作成されなかったと思われる。
  
    →  【詳細別紙】

2023.3
『ディープラーニング 学習する機械』を読んで(1)


 情報処理学会誌(2022年11月号)に2018年のチューリング賞を受賞したヤン・ルカンの
 著書「ディープラーニング 学習する機械」(384頁、講談社 2021)が紹介されていたので、
 私の卒論・修論(1968〜1971)の研究との関連で読んでみることにした。
 
 ・今回は、1章と2章を読み、記事内容の要約と懐古趣味的コメントを記載した。
  主に自伝的な内容で、第二次AIブームやその後の冬の時代を生き抜いた話だった。
  (技術的な内容の詳細は3章以降)
 
 ・私が卒論・修論でニューラルネットワークの研究をしていた1970年前後における
  第一次AIブームの時代の懐かしい話も多く言及されていた。
 
 ・1980年代の第二次AIブームのときには、私は企業の研究所で知識工学の担当となり、
  エキスパートシステム構築ツールを開発していたが、誤差逆伝播法という技術名で
  ニューラルネットワークが再び話題になっていたことはよく覚えている。 
  
    →  【詳細別紙】

2023.2
「ツァラトゥストラかく語りき」読書案内


 2023.2.2の朝日の読書案内
 「 人類に贈る、「超人」への夢 『ツァラトゥストラかく語りき』 」について、
 学生時代(1968年ごろ)の読書体験があり、懐古趣味的視点で読んでみた。
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 ・現代思想に影響を与えるドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェ(1844〜1900)の
  主著「ツァラトゥストラかく語りき」(1884〜85年)は、
  著者自ら「人類がこれまで経験したことのない最大の贈り物」と称した思想書。
 
 ・『ツァラトゥストラ』は、生の喜びを美しくうたいあげた、哲学史上最も偉大な書物。
 ・学生運動に挫折し、すべてが空しくなった時、自分を立て直す手がかりを与えてくれた。
 ・ニーチェの哲学は、生きることを肯定し、絶望した人々を励まし続けている。
 
 →★私も、いたるところに傍線を引いている。
   当時、自分なりに気に入ったフレーズが多かったものと思われる。
 
 ・内容は、「役立つ知識を効率よく得られる分かりやすさ」とは対極にある。
 ・非常に語りづらいことを語ろうとしており、その真意をつかむのは難しい。
 
 →★私は、当時、ニーチェの思想の理解ではなく、
   断片的に自分に都合の良い解釈をして、多くの箇所に傍線を引いたと思う。
 
 ・ニヒリズムからの脱出には、「永劫回帰」と「超人」という概念が鍵。
 
 →★なんとなく、ニーチェをニヒリズムと関連付けていたが、
   むしろ、ニヒリズムからの脱却あるいは克服を意図していたとのこと。
 
 ・あなたが人生の中で一度でも、生の大きな喜びを味わうことができたならば、
  あなたは苦悩に満ちたこの人生のすべてを肯定できる。
 ・自らをより高い者へと変革しようとする意欲こそが『力への意志』であり、
  『超人』へと至ろうとする運動だ。
 ・自分の人生や人類の歴史に認め難い過去があっても、まだ見ぬ未来に
  『超人』という美しく偉大な存在を生みだせば、その過去を全肯定できる。
 
 →★以下の拙著では、3編の冒頭でニーチェの引用句を掲載した。
   ・ 「ソフトウェア危機とプログラミングパラダイム」(啓学出版、1992) 
  
    →  【詳細別紙】

2023.1
施政方針演説における財政健全化への言及(2)


 1,000兆円を超える国の借金が気になるので、首相の施政方針演説を調べてみた.
 昨年と同じ文で、なぜか今回は、物価高対策の項目の中だった。違和感あり。
 
 ・岸田首相の施政方針演説(2023.1.23) → 全文
  <財政への言及部分:「四 新しい資本主義」の「物価高対策」の項>
  『経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます』
 
 (参考:過去のもの)
 ・岸田首相の施政方針演説(2022.1.17) → 全文
  <財政への言及部分:(経済再生)の項>
   『経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます』
 
 ・菅首相の施政方針演説(2021.1.18) → 全文
  <財政への言及部分:(社会保障改革)の項>
   『経済あっての財政との考え方の下、当面は感染症対策に全力を尽くし、
    経済再生に取り組むとともに、今後も改革を進めます』
 
 ・安倍首相の施政方針演説(2019.1.28) → 全文
 <財政への言及部分:(全世代型社会保障)の項>
  『こうした社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、
   二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます』
 
 →★<経済再生→税収増→借金返済>という論法は、
   バブルがはじけた30年前から変わっていない。
   その間に、借金は、約200兆円から1,000兆円超に増加した。
 
 なお、1/24の令和5年第2回経済財政諮問会議の内閣府の資料
  「資料2−2 中長期の経済財政に関する試算」 の【今後の展望】で、
 『財政面では、国・地方のPBは、2025年度に対GDP比で▲0.2%程度となり、
  PB黒字化の時期は2026年度となる』と述べている。
  (注)PB:基礎的財政収支(プライマリーバランス)
  (注)2025年度のGDP予測値は600兆円前後なので、▲0.2%は1.2兆円前後の赤字
 
 →★本資料では、1年遅れの2026年に達成とのことだが・・・
 
 以上

2023.1
『人工知能分野の勃興〜第一次AIブーム』について


 人工知能学会誌の最新号の表紙には、
 『人工知能分野の勃興〜第一次AIブーム』のときの技術や人物が描かれており、
 下記の解説では、その索引として47項目がリストされている。
 そのうちの19件は、当時の私のAI研究(1968〜1971)と関連していた。
 [最新号]
  榊ほか:「表紙企画 人工知能歴史絵巻:これまでのAI これからのAI」
  人工知能学会誌 Vol.38 No.1 (2023/1)、p.92〜p.95
 
 なお、下記のエッセイでも類似の内容を述べており、7件が重複している。
 [過去のエッセイ]
  2021.11: 『コンピューティング史の流れに見る「人工知能」という研究分野』を読んで 
 
  以下の別紙では、私の研究史と関連した19件について、懐古趣味的コメントを記述した。
 
    →  【詳細別紙】

2022.12
羽生九段の「AIによって向き合う、棋士の存在価値と意義」を読んで


 2022.12.23の朝日の記事 「平成の覇者 令和の挑戦」のなかで、
 将棋の羽生善治九段がAIについて語っている内容が興味深い。
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 ・将棋の羽生善治九段(52)は、王将戦の挑戦者決定リーグを6戦全勝で優勝し、
  藤井聡太王将(20)との王将戦七番勝負は2023年1月8日開幕予定。
 
 【羽生の発言「AIによって向き合う 棋士の存在価値と意義」の要約】
 ・AI研究では、複合的な要素がある:
    比重をどうするか、
    信用するかどうか、
    何を取捨選択するか、
    自分で考えることで何を生むか。
 
 →★AIの示す次の一手を疑って、最善かどうかは自分で判断するということかな。
 
 ・オリジナリティーを出すのが難しい今、棋士の存在価値と存在意義が問われています。
 
 →★棋士の存在価値と存在意義は、勝つことだけにあるのではなく、
   AIも先人も気づかなかった独創的な手を指して勝つということかな。
   将棋の世界では、AIの影響を受けて、後手の横歩取りが減っていたが、
   羽生九段は、横歩取りを採用して勝率を挙げたとのこと。
 
 ・AIも探索しない空白の場所は必ず存在します。
 
 →★これはもう哲学の世界かも。
   AIは、勝率がnegligible smallと判断したら、その先は探索しないので、
   AIに勝つためには、その先の探索をあきらめてはいけないとのこと
 
 ・一局の将棋は後悔だらけですが、後悔の多い人生こそ充実している。
  甲乙付けがたい局面、難しい状況にたくさん出会っているということですから。
 
 →★凡人は、後悔して落ち込むだけだが、そうではなく、
   失敗から多くを学び、次につなげていくということかな。 
 
    →  【詳細別紙】
 
 

2022.12
ノーコード:プログラミング知識不問のアプリ開発とは


 最近、よく見かけるIT用語「ノーコード」について、
 大学の研究室(明大中研:明治大学 中所研究室、1993年〜2017年)で研究してきた
 「エンドユーザ主導のアプリケーション開発技法」の観点で以下の記事を読んでみた。
 <参考記事>
  「ノーコードとは:プログラミング知識不問のアプリ開発、ローコードとの違いは」
   日経クロステック Active 2022.07.14
 
 ■記事内容の要約とコメント(→★)
 ・企業は、事業環境や顧客ニーズの急速な多様化、複雑化に対応するため、
  自社主導での柔軟で迅速な開発が必須となっている。
 
 →★明大中研では、20年前の学会発表で同様の主張をしている:
     「絶えざる変化に対応するエンドユーザ主導型アプリケーション開発技法」
   情報処理学会 第62回全国大会 特別トラック(4),6H-01,pp.87-92(Mar. 2001)
     <関連部分の一部引用>
     『開発費の面だけでなく、サービスの変化に迅速に対応するという面からも
      業務の専門家が自らの業務を自ら自動化するためのエンドユーザ主導型
      アプリケーション開発技術が必要』
 
 ・プログラム開発言語を用いず、GUI(Graphical User Interface)を使った
  アプリケーション開発手法を「ノーコード開発」と呼ぶ。
 
 ・現場のニーズをよく知る業務部門の担当者が、用意されたテンプレートや機能ごとの
  部品をドラッグ&ドロップで配置するだけで、アプリケーションを作成できる。
 
 →★明大中研のエンドユーザ(業務専門家)主導開発技法と同じ!
   過去ブログでも実例を紹介している。
   ・2007.8   (続)長崎県庁システムとエンドユーザ主導開発
   ・2005.9   長崎県庁システム(長崎ITモデル)
 
 ・ノーコードのメリット
  (1)プログラミングの知識が不要
  (2)速く安く作れる
  (3)IT部門への依存からの脱却
  (4)現場とのミスマッチ解消
 
 →★明大中研のエンドユーザ(業務専門家)主導開発技法と同じ!
   特に、「サービスの変化に迅速に対応する」ことが重要。
 
 ・ノーコードのデメリット
  (1)自由度や拡張性が低い
  (2)大規模開発には向いていない
  (3)習熟までの時間とコストがかかる
 
 →★テンプレートと部品による開発であっても、インタフェースの標準化により、
   追加の部品のIT技術者への外注は容易と思う。
  
 →★大規模開発では、サブシステムに分割して構成しているので、
   業務の専門家とIT専門家の担当するサブシステムの分割は可能と思う。
   さらに、その間のインタフェースをWebサービス化などで標準化しておけば、
   大規模開発にも同様の技術が適応可能と思う。
 
 ・ノーコード開発ツールの基本的な機能
  (1)テンプレート機能
  (2)コンポーネント機能
  (3)データベース機能
 
 →★これらの3項目を組み合わせたエンドユーザ主導開発について、明大中研では、
   UI駆動型アプローチでビジネスロジックの処理を定義するテンプレート:
   {UI→BL→DB→BL→UI}を提案している。
   (注)UI(画面定義)、BL(ビジネスロジック)、DB(データベース)
    <参考文献例>
      「ビジネスロジックの要求定義に関するケーススタディ」
       情報処理学会 要求工学ワーキンググループ ワークショップ(May 2013)
 
 →★明大中研では、1990年代から、オブジェクト指向ベースの部品の組合せを基本に、
   ドメイン特化型フレームワークなどの研究試作を実施してきた。
    <参考文献例>
       「エンドユーザ主導開発のためのドメイン特化型技術の適用性に関する考察」
       電子情報通信学会 知能ソフトウェア工学研究会 KBSE2016-28,
        pp.25-30(Nov.2016)
 
    →  【詳細別紙】