「差別発言した人工知能の学習モデルは?」

                (2016.3のブログの詳細 2016.3.28

3/23に公開された人工知能を使ったマイクロソフトのチャットボットTay(テイ)が

ツイッターで人種差別や性差別的な発言をするようになり、翌日には実験は中止された.

 

【参考サイト】

   http://www.cnn.co.jp/tech/35080140.html 

「人工知能が差別発言、マイクロソフトが黙らせる」

   http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM25H5K_V20C16A3000000

「米マイクロソフトの人工知能、ツイッターで差別発言連発」

 

【要点】

・チャットを通じて新しい言葉を覚え、会話能力を身に着ける仕組みだった

・大量の差別的発言を学習した結果、同様の発言を返すようになった

 「ヒトラーは正しかった」

 「男女同権論者は全員死んで地獄で燃やされるべきだ」

・マイクロソフトは不適切なツイートを削除し、ソフトウエアを修正中.

 

【疑問】

★採用した学習モデルが単純すぎたのではないだろうか?

 

【コメントと関連する学会発表】

・中所、齋藤 : 思考過程のシミュレ-ション

 電子通信学会オ-トマトン研究会資料、A70-76(Dec.1970)  

http://www.1968start.com/M/bio/olduniv/gakkai7012.html 

 

・中所、齋藤 : 簡単な思考モデルによる討論学習効果について

 電子通信学会全国大会、231(1970).  

http://www.1968start.com/M/bio/olduniv/gakkai1970.html 

 

以下,46年前の,ニューラルネットワークを用いた討論学習を紹介する.

[幼年期/少年期I/少年期II/青年期/それ以降]の5種類の学習モデルを設定して,

討論学習による思考の発達段階をシミュレーションした.

 

★今回の差別発言学習のケースは少年期Iの討論学習に相当する

 

今回の実験は,

「ツイッターなどを通じて誰とでもチャットできるプログラム」だったので,

少年期IIと類似の討論学習を想定していたと思われるが,

意図的に特定の人間が集中的に対話したので,結果として,

少年期Iのような結果になったと思われる.

 

【5種類の学習モデル】

▼幼年期:具体的概念を個々に形成しつつ、相互の関係を学習していくが、

それはニューロン学習に近いL1で、[]との対話
少年期I学校で教えることを無批判に学ぶL3で、[先生]の講義
少年期II:放課後などに、興味あることを周囲の人たちに

積極的に話しかけて学ぶ。L2で、[大人]との対話
▼青年期:自己主張意欲が強い。L1, 3で、[友人]との論争
▼青年期以後:独り内省により考えを整理する。L1でランダム入力

 

討論学習効果は、次の3種類を設定。
 L1:時刻tokt+1oj1ならば、mjk → mjk+δ1
        →概念kの出力の直後に概念jが出力されたとき,

     概念kから概念jへの連想度を強化する.

L2:時刻tokt+1ij1ならば、mjk mjk+δ2
→概念kの出力の直後に概念jが入力されたとき,

     概念kから概念jへの連想度を強化する.

 L3:時刻tikt+1ij1ならば、mjk mjk+δ3

→概念kの入力の直後に概念jが入力されたとき,

     概念kから概念jへの連想度を強化する.

 

★研究会発表の図6「思考の発達段階」
http://www.isc.meiji.ac.jp/~chusho/blog/A12a.jpg学習度
 「知識の蓄積」を示し、学習度が飽和すると
 ワンパターンの思考になる
学習エントロピー
 「知識の処理機能」(思考の柔軟性)を示し、
 少年期後期がピーク!

 

【修士論文:関連する章の目次】

「思考過程の数学的表現と模擬実験」(1971322日提出)

http://www.1968start.com/M/bio/olduniv/shuuron.htm 

 

第三章  思考過程の計算機シミュレーション

 3.1  討論学習のシミュレーション

        1.学習と評価

        2.使用プログラムの概略

        3.L1型学習の性質

        4.L2型学習の性質

       5.L3型学習の性質

        6.討論学習T…自己主張意欲大なる場合

        7.討論学習U…学習意欲大なる場合

 3.2  思考の発達段階のシミュレーション

        1.成長に伴う対話の意味の変遷

        2.シミュレーションの方法

       3.結果と考察

 

以上