修論の発表

{後・評}当時は怖い物知らずで、大胆な仮説を、、、

(注)以下は、昔の印刷物から音声入力(数式の表記は不正確)

<キーワード: 拡散と集中のモデル、討論学習>

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昭和45年度電子通信学会全国大会 231



簡単な思考モデルによる討論学習効果について

中所武司 斎藤正男 (東京大学 工学部)
最近、思考に関する問題が、心理学の分野にとどまらず、広く自然科学の分野でも注目されてきている。ここでは、思考言語の機能を手がかりにして、思考のモデルを考え、そして、それによる討論学習過程の計算機シミュレーションの結果をご報告する。

人間の思考過程は、言葉の鎖によって導かれ、また、これを導くところの、ある連続量の流れとして考えられるので、それは、エネルギーの拡散と集中の絶えざる繰り返しの過程であると言っても良い。 大脳内部におけるエネルギーの分布は、この拡散と集中の繰り返しの中で変化し、十分な集中は、ある概念を想起させ、その言語化を促進し、次に、十分な拡散になって、その概念からの連想が促されると考えられる。

このような観点から、図1のような系を思考のモデルとして考えた。I=I(i1, ,in)は外からの入力、L=L(l1, ,ln)は話し言葉のような外部への出力、Q=Q(q1, ,qn)、およびS=S(s1, ,sn)は内部状態である。fは拡散関数で、S=f(Q)、gは集中関数で、Q=g(S)で、一般には、qi=si、qi**2 > si**2なる性質をもつようにする。hは閾値関数で、Qの要素のうち、ある値以上になったものだけが言語化されて、出力Lになる。この系の過去の記憶(経験、学習)はfに表現され、性格的な面はgに表現される。したがって、fとgをどのような関数に選ぶかによって、この系は、固有の性質をもつことになる。具体的には図2のような結果が予想される。

この思考のモデル2個を用いて討論学習をシミュレーションした。I, Q, S, Lは10次ベクトル、fは一次写像で、その対応する行列をA(aij=1)とすればS=A・Q、gの方はqi=si**2/sjかつqi >= 0.5の時はqi=1なる関数とし、hはqi=1の時はli=1、他は0とする関数である。学習機能は、次のような形でAの要素を変化させる。

qi(t)=qi(t-1)=1の時、aij=aij+0.1、akj=akj/1.1 k=1, 2, …

           aji=aji+0.05, ali=ali/1.05 li=1, 2, …

qi(t)=qi(t-2)=1の時、aij=aij+0.05、akj=akj/1.05 k=1, 2, …

2個の系I, IIの間の討論はLI=TII, LII=TIとして行い、全体の手順を図3に示す。図4はI, IIに同じ評価基準を与えた場合で、成績の向上が見られるが、図5は反対の評価基準を与えた場合で、Iの方に大きな混乱が見られる。このほかにも、図3のI, IIの初期学習を変化させれば、いろいろな場合を設定できる。なお、図4b、図5bは、行列AI, AIIを、100次元空間における位置座標と見たときの距離d=√堯aijI-aijII)**2を示しており、だいたいテスト結果と対応している。

このような研究は、将来、工学的な分野以外でも、例えば、多様なパターンを持つ失語症など、精神病の解析にも重要な意味をもってくるものと思われる。