はじめての学会発表(卒論成果)

{後・評}ここでの「自由なニューロン」の考えは、後のPLA(Programmable Logic Array)と機能的には同じ回路だった。

{後・評}ここでの「自由なニューロン」の考えは、神経幹細胞の存在を予言していた!?
     神経幹細胞は、新しい神経細胞を作り出すらしい。

{後・評}ここでの「自由なニューロン」の考えは、海馬の新生ニューロンの存在を予言していた!?
     記憶力に関係する海馬は、新しい神経細胞を作り出すらしい。


(注)以下は、昔の印刷物から音声入力(数式の表記は不正確)

<キーワード:学習機能、自由なニューロン、Programmable Logic Array>

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昭和44年度電子通信学会全国大会 242



条件反射における学習機能に注目した回路モデル

中所武司 斎藤正男 (東京大学 工学部)
学習する機械を考えるとき、生物の学習機能を解析してモデルを考える生体工学的方法があり、ここでは、条件反射を解析して、ある程度その機能を持つ回路を考えてみた。

条件刺激は、主に単純刺激の組合せからなり、条件反射の形式は新皮質のニューロン間の結合と考えられる。ニューロンの学習機能としては、同時に興奮したニューロン間の結合度を増加させる方式があるが、これでは最初にある程度の結合度を与えるため、これが後の神経網の形成に影響して、複雑な学習をさせることができない。そこで、結合度が0から出発するような学習機能が必要となるため、 入出力ニューロンと無結合の「自由なニューロン」を考え、これは同時に興奮したすべてのニューロンと結合してAND回路を形成すると考えた。

以上の考えに沿って作られた回路は図1である。興奮性入力Eは定電流i0を用い、抑制性入力Iは接地を用い、Sはpnpnスイッチ素子で、スイッチ電圧Vs=r・i0であるとする。学習素子Lと入力E, I, 出力Oとの交流は、SiO2膜などで絶縁され、学習効果は、これが絶縁破壊で短絡することである。

入力Πs=Es1・...・Estで出力Oiが応答するような学習の手順は

1)Es1, , Estの入力端子に電圧Vsを加える。

2)任意の学習端子Lkに−Vsを加え、Es1, , Estとの交点を短絡。

3)Lk開放後、出力Oiに−Vsを加え、Lkの出力側とを短絡。

結局、1)〜3)によって、第k番目のスイッチ素子を使って、t個からなる入力ΠsのAND回路が形成され、その出力側がOiに接続されたわけである。この回路では、非線形な組み合わせで形成される条件反射や条件抑制が可能になる。

この応用としては、図2のように出力側に負バイアスを加えると、入力数のうちの(Vs-Es)/Vsがonになれば応答する動作や、ハミング距離用の極小距離分類機あるいは極大選択機のような動作も行う。この可変負バイアスを各々の出力に加えると、閾値調整可能の閾値回路ができ、図3のように、E入力を閾値決定用、I入力を入力にしても閾値回路が構成できる。

この回路は、現在のIC技術では、図4のように容量の小さいものしかできないが、LSIの技術が進歩すれば、基本的な素子群のICを4種類作っておけば、以後は配線板だけ作成して、図5のように任意の容量の回路を作ることができる。